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2006年08月31日

匿名エスクローサービス「オークション宅急便」の問題点

クロネコヤマトの宅急便で有名なヤマト運輸が、発送側・受取側がともに匿名のままで利用できるエスクローサービス「オークション宅急便」を11月中旬から開始する。

http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20218627,00.htm

このサービスの概要を見る限りでは、かなりの匿名性の高さが保たれるようだ。代金の支払いはヤマト運輸を介して行うため、送金側はヤマト運輸から銀行引き落としを受けるだけだし、受金側はヤマト運輸からの振込を待つだけとなる。お互いの銀行口座は知られることがない。また商品の発送についても従来のような発送方法はもちろん可能で、それ以外にもコンビニなどヤマト運輸取扱店の店頭で直接商品の受け取りができるというサービスの提供まで開始されるというのだから、銀行口座も住所も全く知られずに取引が可能になる。つまり、民間私書箱がやっているようなことをヤマト運輸が提供するのと同じようなサービス、ということになる。

さてここまで見てきて不安になるのは、その匿名性の高さゆえの犯罪の恐れだ。昨日の記事(http://www.digitalistblog.com/060830104619.html)でも書いたように、詐欺や違法取引の手口は日に日に巧妙化している。むやみに匿名性の高い取引方法が提供されると、必ずそれを悪用する輩が現れてくる。出品者と落札者が互いに相手の氏名も住所も銀行口座も知らないままに商品とお金のやり取りをする。これが違法商品の取引装置として使われないはずがない。

お互いの氏名・住所・銀行口座名義などがわからないままに取引することのデメリットは、単に詐欺などの事件の危険性を増加させるだけではない。詐欺などの事件の被害者に対する救済措置が受けにくくなるという大きな損失がある。というのは、ヤフージャパンの詐欺被害補償制度の利用には、取引相手のYahoo!ID・氏名・住所・銀行口座・電話番号の情報がすべて揃っていることが条件となる。相手の住所がわからないままで詐欺被害にあった場合は、ヤフージャパンとしては基本的に何も救済措置は取ってくれない。また、警察は被害届は受理してくれるが、相手の氏名も住所もわからない場合はほとんどマトモな捜査は期待できない。詐欺被害者から見れば数万円を搾取されたら被害は大きいが、日頃から殺人や強盗を相手としている警察から見ればこんな詐欺事件はくだらない雑魚雑務であることは想像に難くない。

Yahoo!かんたん決済はYahoo!IDを知られるのみの匿名性がうりの一つだが、この匿名性は結局、相手に名を知られずに違法商品(不正コピーCD-ROMや児童性愛者向けDVDなど)の販売を行うのに便利に使われてしまっている。ヤフージャパンはこの決済装置を提供するだけでその利用の善悪は利用者のモラルに任せる、という放置方針を貫いているが、顧客の信頼も大切にしなければならない宅配業者であるヤマト運輸が、自社のエスクローサービスが犯罪の温床となりうることに対してどうやって対応するのか。

詐欺被害が発生したとして、取引相手が匿名であるからその氏名や連絡先を調べようとした被害者は、まずヤマト運輸にそのエスクローサービスの利用相手を照会するだろう。そのときに確実に取引相手が照会できることがヤマト運輸には当然期待されるはずだ。もしここで取引相手の氏名や連絡先をヤマト運輸も把握していなければ、詐欺被害者からの訴訟の矛先がヤマト運輸そのものに向く可能性だって否定できない。

匿名ゆえの問題点にどう対処するのか。ヤマト運輸の腕の見せどころでもあり、不安がぬぐいきれないところでもある。

Posted at 2006/08/31(木曜日)21:22

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